小説家志望の休暇

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トリスタン・イズー物語

 「トリスタン・イズー物語」とは岩波文庫から出版されている小説である。この物語はケルト起源を持つものだと言われていて、12世紀ごろから、多くの詩人によって語り継がれている。それを平明な散文の形で編纂したのがこの「トリスタン・イズー物語」である。編者は19世紀フランスの学者のベティエという人である。

 この物語の内容は、トリスタンという勇敢な騎士が、イズーという他国の王の娘と熱烈な恋をするというもので、結末では二人は激しい恋の力によって共に悲劇的な死を遂げる。西欧人の恋愛観の形成に大きく影響を与えている恋愛物語の雛型なのである。

 この物語で一番のカギとなっているのが、媚薬である。つまり惚れ薬だ。ひとたび男と女がその薬を飲んでしまうと、生きている限りすこしも離れていられなくなる強烈な媚薬である。そうと知らず、トリスタンとイズーはその媚薬を飲んでしまう。トリスタンは媚薬を飲む以前、イズーに好意を持っていたが、決して愛してはいなかったのに。

 つまり二人は、この媚薬を飲まなかったのならば、生きていることも死んでしまうこともできないくらい激しく悲劇的な恋をしなくて済んだわけである。西欧人の恋愛観の形成に大きく影響を与えているこの「トリスタン・イズー物語」は、端的に言ってしまえば、純粋無垢な心と心が惹かれ合っていくきれいな物語ではなく、人工物である媚薬に全的に物語の潮流を託した汚濁の物語であるのだ。

 読み終えてみて、私はしかしてこういうものが西洋人の恋愛観であるのかもしれないとも思った。具体的には説明しないが、決して日本人が共感できるような筋立てではないような気がする。

 



テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/07/06(月) 19:34:58|
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